コメ不足に伴う価格の高騰で消費者への影響が続いています。また、コメの生産現場では倒産や廃業が急増しています。
■コメ不足で買い取り価格アップ
片桐農園 片桐光江さん
「本日90袋入っているので、並んでいる人は十分購入できると思うが、これから来られるお客様にも渡りますようご協力お願いいたします」
北海道長沼町にあるコメ農家の直売所。9日、朝早くから新米を求める行列ができていました。
新米を買いに来た客
「やっぱりコメは大事。コメがあれば品数少なくても人間満足する」
「自宅にあるコメが少なくなってきたので、早めに手あてしようと」
開店から1時間。90袋あった新米はあっという間に売り切れました。
徐々にコメ不足は解消しつつありますが、全国各地で新米を求める動きは続いています。
各県のJAは、コメを買い取る際に生産者に支払う前払い金「概算金」の引き上げを決めていますが、生産者はどのように受け止めているのでしょうか?
つばめ農園 布施俊章社長
「もうみんな目が輝いちゃった。すごくうれしかった」
千葉県市原市で「コシヒカリ」などを生産している布施さん。市原市のJAは先月、コシヒカリの一等米、60キロあたりに対する概算金を前年から6500円アップした2万円にすることにしました。
布施さんはJAと取引していませんが、コメの販売価格は概算金をもとに決まるため、自身のコメについても値上げすることができました。
布施社長
「2万円は自分が農業をやっている間にはならないと思っていた」
■「今年はバブルです」コメ高騰も…
一方で、概算金の高値は「今年だけなのでは」とみています。
布施社長
「去年は新潟で(品質低下により)二等米・三等米が出たため影響あったかもしれない。今年は多分、全国的にそういう被害もなさそうなので、コメは余っていくと思われる。コメが余れ農協も(概算金を)下げてくると思う。(今回は)“バブル”ですよね」
そもそも、これまでのコメの価格が安すぎたと話す布施さん。収入が上がらないことなどが原因で、自身の周りでも近く、2つのコメ農家が廃業するといいます。
帝国データバンクによりますと、去年は35件のコメ農家が廃業。今年は8月時点で廃業農家は34件に達していて、過去最多となる見込みです。
布施さんの農園も借金が続き、厳しい経営状態が続いています。
布施さん
「苦しいのは、燃料・電気代。コンバインと乾燥・調整の燃料代だけで8万円くらい毎日飛んでますね」
燃料代は去年と比べて年間で75万円上昇。稲刈りに欠かせないコンバインも10年ほど前と比べて価格がおよそ600万円上がるなど、コメ作りを巡る環境は厳しさを増すばかりです。
布施さんは生き残りをかけ、去年から輸出用のコメを育てて販路を拡大していますが、こうとも話します。
布施さん
「ここである程度米価が上がれば、返済の方も回せるので。これが1年だけではなく、何年か続いてほしい」
■高齢者が廃業 新規参入の若手おらず…
コメ農家が直面している問題は他にもあります。
農林水産省が開く意見交換会のメンバーにも選ばれているコメ農家の山嵜哲志さんが指摘するのは…。
ファームフレッシュヤマザキ 山嵜哲志さん
「単純に高齢の人たちが今一番(農家を)辞められて、(田んぼが)そのままになっていくというのが問題」
耕作放棄地にならないよう、山嵜さんの会社では手放された水田を管理しているといいますが…。
山嵜さん
「(離農の)ペースが早すぎて間に合わないくらいで、単純におコメを作る人の方が少ないのかなと思う」
高齢者が廃業し新規参入する若手がいないため、このままでは将来、日本が深刻なコメ不足に陥る可能性があるといいます。
山嵜さん
「人にまず来てもらわないといけない。農業の魅力をちゃんと発信していかないといけない」
(「グッド!モーニング」2024年9月10日放送分より)
[テレ朝news]